マイナビ女子オープン西山女王VS加藤女流三段 加藤女流完全シャットアウト!

こんにちは。将棋観戦記は久々の更新になります。
今回の将棋観戦記は、第13期マイナビ女子オープン五番勝負第3局より、西山女王VS加藤女流三段の対局の棋譜を掲載致します。
本棋戦五番勝負の対戦成績はこれまで1勝1敗の五分、本対局でどちらかがリーチとなりますね。

本対局日程は2020/05/12、開始時間は10時、場所は東京将棋会館「特別対局室」で行われました。
持ち時間は各3時間、加藤女流三段の先手番となっています。

先手加藤女流▲2六歩、戦型は対抗形へ

▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △4四歩 ▲4八銀 △3二飛

6手目後手3二飛

先手の加藤女流、初手は▲2六歩と突きました。加藤女流三段は振り飛車が多い女流の中では少数派の生粋居飛車等ですね、奨励会時代はわかりませんが、飛車を振ったところを見たことがありません。
対して西山女王は加藤女流に反して主戦は、ほぼ振り飛車、相手が振って来た時も相振り飛車になる確率が高いですね。
男性トップ棋士の中で振り飛車を主戦にしている棋士は少数で、男性棋士の中では近年はゴキゲン中飛車以来あまり振り飛車は人気がありませんね、シビアな世界ですので、勝率の悪い作戦は、すぐに廃れてしまいますね。
しかし女流棋界は何故振り飛車が多いんででしょうかね、ま、考えてもしょうがないか。
局面図は後手の西山女王が△3二飛と三間飛車に構えた所、戦型は対抗形となりました。

先手加藤女流いきなり▲4五歩と仕掛ける!

▲2五歩 △3三角 ▲6八玉 △4二銀▲4六歩 △6二玉 ▲4五歩

13手目先手4五歩

前局面図以降、先後共普通に駒組みが進むかと思いきや、13手目、加藤女流三段がいきなり▲4五歩!と仕掛けました、玉は6二にいて、不安定じゃないのかな~。B級グルメ戦法に感化された一着なのでしょうか。△4五同歩、▲3三角成、△同銀で何ともないように思えますが・・。

 

阿久津先生今回も美味しく頂きました、的な▲6五角打!

△同 歩 ▲3三角成 △同 銀 ▲6五角

17手目先手6五角

8三の成り込みと飛車との交換を狙った▲6五角!筋違い角はB級戦法の臭いがプンプンします。
ちなみに、▲4五歩の仕掛けは、「加部流」と言って以前から存在する仕掛けなのだそうです。▲6五角の流れまで含まれているかはわかりませんが。
▲6五角に対して、後手はどう受けるのでしょうか、飛車には紐がついているので、まずは8三の地点を受けたい所。今期三段リーグ主席の腕が問われます。

先手飛車を取り▲4一に早くも降ろす

△7四歩 ▲3二角成 △同 金▲4一飛

21手目先手4一飛

前局面図以降、後手の西山女王は△7四歩と受けました、▲同角と取れば△7三玉と上がったのでしょうか。
先手の加藤女流は7四にはいかず、3二の飛車を取りました、△3二同金に▲4一飛、早くも敵陣に飛車を打ち降ろしました。
2一の桂と、4五の歩取りになっています。

後手、先手の飛車の相手で精一杯、先手余裕の4四歩垂らし

△2二銀 ▲2四歩 △同 歩 ▲同 飛 △1二角 ▲4四歩

27手目先手4四歩

前局面図以降、後手の西山女王は△8八銀と着手、先手が▲2一飛成と桂を取れば△3一金で竜が捕獲できる仕組み。それに対し先手の加藤女流は▲2四歩と突きます、落ち着いてますね、以降△同歩▲同飛となり、2枚の飛車で後手陣を圧迫。
後手はたまらず1二に角を投入、これは厳しですね、後手はもう飛車の相手で精一杯、そんな後手を横目に先手は▲4四歩と余裕の歩垂らし、次の▲4三歩成りが厳しい。

先手2枚換えと竜作りに成功、後手早くもピンチ

△3三角 ▲4三歩成 △同 金▲2二飛成 △同 角 ▲4三飛成

33手目先手4三飛成

前局面図以降、後手の西山女王は△3三角と着手、▲2四の飛車に当てて忙せます。
対して先手は落ち着いて▲4三歩成、△同金に▲2二飛成と当たりになっている飛車を銀と刺し違えました。△2二同角に▲4三飛成と飛車を成りながら金を取り返します。
駒割は角と金銀の二枚換え、しかも先手は竜を作ることに成功しています。
後手の楽しみは角の9九への成り込みでしょうか。そして1二の角の働きは今後どうなるのか。

これぞ奨励会三段!好手2二飛!

△9九角成 ▲7七桂 △2二飛

36手目後手2二飛

前局面図以降、後手西山女王は△9九角成と馬を作りながら香車を補充、対して先手加藤女流は▲7七桂と一旦は角道をブロック。真の狙いは隙を見ての△6五桂跳ねでしょうか。
しかし次の西山女王の指し手△2二飛!自陣の2段目の防御も兼ねながら成り込みも狙えるカッコイイ手です。アマチュアなら飛車は9八か2六あたりに打ってしまいがちですけどね。9八はないか・・。奨励会三段なら一目なんでしょうね。

先手本日2度目の▲4四歩

▲6五桂 △5一香 ▲4二銀 △7二玉▲5一銀成 △同 金 ▲5三桂成 △6二銀 ▲6六香 △5三銀 ▲同 龍 △5二金 ▲5五龍 △5一歩▲4四歩

51手目先手4四歩

前局面図以降、先手加藤女流は早速狙いの▲6五桂を着手、5筋からの殺到を匂わせます、後手の西山女王△5一香、対して先手▲4二銀と食らいつきます、2二に飛車が居るので薄い攻めが出来ません、厚く、厚く。
後手一旦は△7二玉と深く逃げます、先手▲5一銀成、後手△5一同金、そして先手▲5三桂成と桂が成りこんで攻め駒が2枚になりました。後手も△6二銀と受けに枚数を足しますが先手加藤女流▲6六香として9九の馬のラインを消しつつ6三の地点に利きを足します。後手は6筋は受けずに△5三銀と成桂を取り▲5三同龍に、△5二金と飛車と連携して竜を弾きました。▲5五龍に後手△5一歩、守備100%の手、厳しい。そして先手本局2度目の▲4四歩、落ち着いてますね。

挑戦者加藤女流完全シャットアウト!後手西山女王投了

△2九飛成 ▲3九金 △2三龍 ▲4三銀 △5三桂 ▲7八金 △6二銀 ▲8八銀 △8九馬▲7九金 △9八馬 ▲5四金 △8四桂 ▲8五龍 △投了
まで65手で先手勝ち。

投了図先手8五飛

前局面図以降も挑戦者の加藤女流は落ち着いた差し回しを見せます。まず4、5手掛けて相手の馬を完璧に封じ込めてから、4四の拠点を活かして金銀を打ち込みます。
△5三桂で若干先手の攻めが送れると見た後手の西山女王は△8四桂とようやく攻めの手(次の△7六桂が厳しい)を着手しますが、先手▲8五竜と希望を閉ざします。
これを見て西山女王投了を宣言しました。先手の完全シャットアウトの印象です、素晴らしかった。

 

両先生方、今回も勉強になりました、ありがとうございました。

 

 

 

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